大阪体育大学は、開学以来の伝統がある体育学部が組織改正され、4月1日、スポーツ科学部が誕生します。スポーツ科学部開設を記念したシンポジウム「スポーツサイエンスが拓く未来」が3月23日、熊取キャンパスで開催され、3大会連続のオリンピック出場を決めたバスケットボール女子日本代表の恩塚亨ヘッドコーチらが講演しました。
<久木留毅氏?恩塚亨氏講演内容全文>
<毎日新聞記事>
大阪体育大学は、東京五輪翌年の1965年、東京五輪選手強化対策本部長?選手団長の大島鎌吉氏らを迎えて、西日本初の体育大学として開学。以後、日本を代表する「スポーツの総合大学」の一つとして数多くのアスリートや指導者、研究者、ビジネスパーソン、教員らを輩出しました。
現在、社会がスポーツに対して期待する領域は拡大を続けています。また、これまで経験やカンに頼っていたスポーツの指導は大きく変化し、データベース、エビデンスベースに基づく分析力、課題解決能力、クリティカルシンキングなどが求められるようになりました。大阪体育大学は新たな時代の要請に対応するため、より科学的な視点で「スポーツを科学」し、より幅広く実践的にスポーツの学びを深めることができるスポーツ科学部をスタートさせました。
スポーツ科学部はスポーツ教育、体育科教育、スポーツ心理?カウンセリング、スポーツマネジメント、アスレティックトレーニング、健康科学の6コースを備えますが、この6分野すべてをカバーしている大学は全国でもまれです。専攻コースとは別の専門科目を履修できる全国でも珍しい「副専攻」も導入し、「スポーツ心理に詳しい保健体育科教員」など幅広い知見を備えた人材を養成します。
シンポジウムは各大学の教職員、本学卒業生、大学教職員などのほか、この日午前中に実施された春のオープンキャンパスに参加した高校生やその家族ら約300人が参加しました。
シンポジウムは、原田宗彦学長(スポーツマネジメント)が「体育学部をスポーツ科学部に変更し、新しいカリキュラムを展開していく本学に、このシンポジウムで示唆、ヒントをいただきたい」とあいさつして開会しました。
続いて、ハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC)長?国立スポーツ科学センター(JISS)所長で久木留(くきどめ)毅さんが「ハイパフォーマンスからライフパフォーマンスへ」のテーマで基調講演。「ハイパフォーマンス領域で培った栄養、心理、映像など様々な分野をパッケージ化してスライドでの研修をつけて地域に展開していますが、これを大阪体育大学から大阪、和歌山など各地域の中学校、小学校などに展開することもできます」と話しました。HPSCは大阪体育大学など17機関と連携協定を結んでいます。久木留さんは「HPSCにはハイパフォーマンスの専門家は多いですが、小学生の体力レベルの強化などについて専門家はいません。大阪体育大学のこの分野の専門家が、私たちが培った知見のトランスレーターとして新たなパッケージを作ることは十分できます」などと本学に期待を寄せました。
続いて、恩塚ヘッドコーチが「バスケットボールコーチの視点から」のテーマで記念講演に臨みました。恩塚さんは「選手として実績のない私に何ができるかと考えて始めたのがスポーツ科学。ゲーム分析を掘り下げることでコーチングができ、五輪予選で勝てました」と話しました。「私は勝つべくして勝ちたい。そのためには『こうしたら勝てる』という論理的確信につながるデータが必要です。自分たちの卓越性、強みを『アジリティ(敏捷性)』と定め、それを武器に戦いました」と振り返り、「データを行動決定に活かすためには情報をストーリーでつなげることが重要。目的から逆算した台本(スクリプト)を作り、それを選手が共有することでチーム力を発揮することができました」と話しました。
続いてシンポジウムに移り、三島隆章スポーツ科学部長がコーディネーターを務めました。スポーツ科学部について、新たに始まるデジタルスポーツ論など概要が説明された後、ディスカッションとなり、スポーツ科学について様々な意見がかわされました。会場からは「五輪予選では選手の自信をどう高めたのか」「将来の日本代表に備えて大学年代が準備すべきことは」などの質問がありました。
最後に久木留さんは「スポーツは量をこなさないとどんなに科学を使っても絶対にうまくなりませんが、科学は間違った方向に行かないことを教えてくれます。大阪体育大学でスポーツ科学を究めてもらえれば、オリンピックやパラリンピックに強い選手が出てくると思います」、恩塚さんは「出会いが人生を変えると思っています。出会いを得られる最高の場が大学だと思います。同じ志の仲間もいるし、その道の先をいく先生もいます。その出会いを最大限に生かし、なりたい自分をしっかり思い描き、そこから逆算して時間を大事にし、夢に向かって突き進んでほしい」と参加者にエールを送りました。
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