11月12日に大阪体育大学は、ハンドボール部女子の選手、監督、コーチ、研究スタッフによるDASHプロジェクトセミナー「コロナ禍の試行錯誤から生まれた知?技術?気づき」を開催しました。
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【セミナー動画=1時間50分】
ハンドボール部女子は昨年の全日本学生選手権で前人未到の7年連続(8回目)の優勝を果たし、実業団も加わる日本選手権で準優勝しました。ハンドボール部女子では、楠本繁生監督の指導のほか、下河内洋平教授(スポーツ医学、臨床バイオメカニクス)がフィジカルトレーニングの指導を行い、バイオメカニクス、心理学、栄養学など複数分野の研究室が共同で実践研究をしながらチームにフィードバック活動を実施しています。
下河内教授は「我々が目指すのは勝った、負けただけのチームではなく、女子ハンドボール部での実践と研究を通じて科学的、経験的な知を得て、それを社会に発信することで社会貢献も行っていくことだ」とし、今回のセミナーでは、3月から7月後半まで続いたコロナ禍での自宅待機や活動制限の中で女子ハンドボールチームが試行錯誤した中から得られた経験知や科学知、気づきを紹介しました。
セミナーは学内会場とオンライン配信の両方で行い、合計約130名の参加者があり、下河内教授の司会?進行により登壇者6人が順に講演しました。
最初の登壇者の井上春奈さん(スポーツ局サポートスタッフ、管理栄養士)は、選手がアプリで入力した食事内容をもとに、足りない栄養素を摂取するためにどうすればよいかというポイントなどを一人一人に対して助言したことや、外食が難しかったため普段の選手の状況を考慮し、選手には極力包丁、まな板を使わない簡単に自炊に取り組めるテクニックを盛り込んだレシピを紹介したことを報告。次に、笹壁和佳奈さん(下河内研究室助手、ハンドボール部女子アシスタントトレーナー)はトレーニング施設や設備が利用できない状況下でのトレーニングとして、水を入れたタンクを使ったウエイトトレーニングを紹介し、自粛前後の筋力の数値をもとに片脚トレーニングや身の回りにあるものを活用するなどの工夫次第で筋力向上に対して十分な効果が得られると説明しました。
選手からは、ともに4年生であるトレーニング係の吉留有紀さんと主将の相澤菜月さんが登壇しました。吉留さんは、自宅待機中に下河内教授に選手のトレーニング状況を毎日報告するとともに、下河内教授と自宅でのトレーニングプログラムの内容を話し合ったことや、一人でトレーニングをすることの苦しみやそれを打破するための試行錯誤から得られた気づきを紹介。相澤さんは、自宅待機により例年3月に行っている新入生を含めたチーム作りができない中で感じた不安や葛藤、試合が無くなる中で生じたモチベーション低下に苦しんだこと、そして、それを打開するためにオンライン?コミュニケーションを定期的に開催して仲間同士で励ましあったこと、3年生が優勝シーンをまとめて作った「モチベーションビデオ」を見て気持ちを高めたことなどを振り返りました。そして、当たり前だったことが当たり前でないことに気づき、ハンドボールができることの有り難さを実感したことなどを話しました。
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心理面では、三井みのりさん(下河内研究室研究員)が部員の昨年秋の筋力データ、心理データと自粛が明けた今年7月の筋力データを比較したうえで、選手の個人的心理要因であるモチベーションもしくは自信が低い選手は、環境(チーム)要因であるチームメイトの魅力によってまとまる力が高いことで、トレーニング効果の向上率への関連が示唆できることなどを報告しました。
また、楠本監督は下河内教授との対談で、指導理念について「社会で活躍し貢献できる人物を育てることと、自ら学ぶ力をもって自分の目標を達成することができる選手を育てる」とし、自ら考えることができる選手を育てるためには、「なぜそのプレーを選択したのか質問形式で答えさせるなど、常に確認しながら指導を行っていく」と話しました。その他、プレーの再現性を高めるための指導などについて具体例を示しながら自身の指導方針の一部を説明しました。
最後に参加者と登壇者全員による質疑応答を20分程度行い、セミナーは幕を閉じました。
※DASHプロジェクトは、大阪体育大学が有する教育力?研究力を結集し次代を担うアスリートやコーチ、競技力向上を担うスタッフの育成とサポートを行う人材育成の取り組みで、2016年4月に始動しました。DASHプロジェクトセミナーは、アスリートの強化や育成支援に係る啓発活動を目的に、ハイパフォーマンス分野やそれに関わる人材育成に関する知見の収集と研鑽を目的に開催しています。
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